ほんとうはその国の船ではない「便宜置籍船/flag of convenience ship」

「船を資産計上する時ってのはややこしいんやー。便宜置籍船とかなー」
商社で監査をしている方とお話しているときにぽっと出てきた。実質の所有者の国籍と異なる国に籍を置く船のことを「便宜置籍船/flag of convenience ship」と呼ぶ。

・置籍国によっては税法上の優遇を受けることができる
・自国より置籍国の法規制が緩い場合のメリットを享受することができる(例えば乗組員の給与規制だとか)
参考:旗国主義

あたりが,その主だったメリットだろうか。しばしば聞くタックスヘイブンの構造と類似する。

海洋法に関する国際連合条約の九十一条では,以下のように,国と船舶との間では真正な関係が存在しないとならないとされているけれど,「真正な関係」の要件は割と緩め。船舶登録要件に関する国際連合条約(8,9,10条)。

第九十一条 船舶の国籍
1 いずれの国も、船舶に対する国籍の許与、自国の領域内における船舶の登録及び自国の旗を掲げる権利に関する条件を定める。船舶は、その旗を掲げる権利を有する国の国籍を有する。その国と当該船舶との間には、真正な関係が存在しなければならない。
2 いずれの国も、自国の旗を掲げる権利を許与した船舶に対し、その旨の文書を発給する。

https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/unclos1.htm#91

上記を許容する国としても置籍料,更新料を得続けられるメリットがあり,経済制裁を受ける国が,その回避のために積極的に行っている例があるみたい。参考