判断の過程で「他事考慮」と「考慮不尽」について考える

行政庁には裁量権の行使が認められているのだけれど,裁量権の逸脱・濫用があった場合は裁判所はそれを取り消すことができるとされている(行政事件訴訟法30条)。

(裁量処分の取消し)
第三十条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=337AC0000000139_20170401_427AC0000000059

どのような場合に裁量権の逸脱・濫用があったかといえるかの審査基準は以下。

■基準のポイントは以下6つ
1:事実誤認
 判断の基礎となった重要な事実に誤認がないか
2:目的違反・動機違反
 法律の趣旨・目的とは異なる目的や動機に基づいていないか
3:信義則違反
 信義則上妥当か否か
4:平等原則違反
 憲法14条1項を根拠とする原則。合理的な理由なく差別してはいないか
5:比例原則批判
 起こった事象に対して行った行動が社会通念上著しく過大であったり,過少であったりしないか
6:基本的人権の尊重
 対象の権利・自由を不当に侵害しないか

加えて…
その判断をするにあたって以下2点がないかを審査する。
判断過程審査
1:考慮不尽
考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く(小田急高架訴訟本案判決 - 最判平成18・11・2) 
2:他事考慮
考慮すべきでない事項・過大に評価すべきでない事項を不適切に考慮していないか(日光太郎杉事件東京高裁判決 - 東京高判昭和48・7・13)

裁量権に対する判断基準のみならず,日常生活における意思決定の判断基準としても非常に役立つので活用したい。

参考
行政法(第5版)P115-P122