「中小企業金融円滑化法/モラトリアム法」は一度飲んだ塩水

リーマン・ショック後,中小企業の資金繰り支援のために,平成21年(2009年)12月4日,中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が施行された。民主党政権時に成立した,中小企業の借金返済を猶予するよう銀行に求めた法案である。

(目的)
第一条 この法律は、最近の経済金融情勢及び雇用環境の下における我が国の中小企業者及び住宅資金借入者の債務の負担の状況にかんがみ、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に配意しつつ、中小企業者及び住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るために必要な臨時の措置を定めることにより、中小企業者の事業活動の円滑な遂行及びこれを通じた雇用の安定並びに住宅資金借入者の生活の安定を期し、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

https://www.fsa.go.jp/common/diet/173/01/riyuu.pdf
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/housei/17320091203096.htm

平成25年(2013年)3月末に期限を迎えたが,その後も金融庁は金融機関に任意で実行件数の報告を求めたことから、実質的に同法は継続されてきた。法的根拠を失ったにもかかわらず、終了後も申し込みは500万件を超え、実行率は9割を超えた。
http://www.bestbookweb.com/verdad/article.php?id=20190502

報告まとめ
https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20190628-3/01.pdf

2019年3月度で上記報告義務を休止した。
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190301_03.html

2020年3月,実質中小企業金融円滑化法の枠組みが復活。
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20200306.html

中小企業金融円滑化法の期限到来後における金融庁の取組み
中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(中小企業金融円滑化法)は、平成21年12月4日に施行され、平成25年3月末に期限を迎えましたが、金融機関が引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべきということは、今後も何ら変わりません。

金融庁 https://www.fsa.go.jp/policy/chusho/enkatu.html

経営的にちょっと無理があってもドーピング的な貸し付けで支援を受けた中小企業は,ドーピング的な貸し付けでのみ生き残れる状態で無理のある状態で存続してしまう。支援が終わる,あるいは更なる問題が起これば,ドーピングをなしとした存続は極めて困難である。支援をただ存続することにのみ費やさざるを得ない状況では,生き残りの為の変化を講ずる余剰を創出できないからである。

支援によって持続可能な企業へ変化できるか,支援を存続が為にのみ使わざるを得ないか。

ポイントは,見極めと後者の救済の是非。