「IT人材」がSIerに偏っていることがわかるデータ

内閣府発表の,令和2年度年次経済財政報告に以下の図が示されていた。

引用:https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je20/20.html

(1)IT人材が従事する産業の各国比較
IT産業に占めるIT人材の割合は以下とのことであった。
フランス:46.6%
ドイツ:38.6%
英国:46.1%
アメリカ:35.5%
日本:72.3%

上記のように,日本においては72.3%のIT人材がIT産業に集中しており,他国に比べ,ユーザー企業はIT人材の採用が少ない。

ユーザー企業がITのことを理解せず,IT産業(SIerなど)にシステム制作を丸投げしていると揶揄されることはままあるが,その事態を補強する一つのデータとして引用することができる。

システムは一度大きな開発が完了すれば,多くの人材を必要としない。後の保守と改修を行うだけの人材を確保すればいい。保守と改修さえもSIerに任せてしまえば,自社でIT人材を抱える必要はなく,そのような選択をするユーザー企業も少なくないと推定される。

採用・教育コストを考えると,上記にひとつ理はあるが,自企業の業務を詳らかに理解して,それをシステムに反映させたり,円滑な保守・改修を行うとなると,長期目線では自社人材にシステム化を担わせた方が良いのではないか,というのが良く上がる議題である。

現に日本のDX化は他国に遅れていることに加え,ITを活用したビジネスのグローバル展開においては頭に浮かぶ日本企業はあまりない。メルカリと,東南アジアではLINE(といってもこちらは韓国企業だけれど)くらいだろうか。

派遣法関連の法制度含めSIerの仕組みが成立している土壌が現状を作っているか,雇用の流動性の低さがユーザー企業の採用にブレーキをかけているか。どちらにも雇用を守るという意味ではメリットはあるのだろうけれど,昨今のIT業界における日本の劣位をみると,企業の保護は,得られる利益より機会損失の痛手が多いように見受けられる。

今後国が整備してゆく法制度は,IT人材が真に活躍するためのビジネスとITとの双方をより理解し融合し発展させる場づくりであり,IT人材が自身のスキルをもって成長を見込めるユーザー企業に積極的に飛び込む為のモチベーションづくりを促すものである。

そう考えると,様々な施策もポジティブに見えてくるものも多い。
プログラミングを必須科目にーなんて一見すると馬鹿げて見える具体化も,IT単体を立てるのではなく,IT+既存知識の融合という一つの視点あってのことなのである。