星野くんの「二塁打」/道徳に反して成功した人を評価すべきか

ご存じですかね、星野くんの二塁打

道徳の授業で取り上げられていたらしいので、ご存じの方も多いかもしれません。わたしの記憶には凄く、薄く。通っていた小学校では取り上げられていなかったか、もしくは道徳の授業が退屈で聞いていなかったかで、どこかで聞いたことあったかもなー、レベルでした。

舞台は旧制中学での甲子園をかけた野球の試合の一幕でして、授業では、監督の指示に従わなかった星野くんは正しいか否か、みたいなことがテーマになることが多いようです。

要約はこんな感じ

・1 R中学は八回表まで勝っていた
・2 T中学の追い上げにより九回表で同点に
・3 九回裏、山本がヒットで一塁に出た
・4 そこでバッターは星野くん
・5 星野くんはその日、四球1回、三振2回と成績が悪かった
・6 星野くんは元来当たれば飛ばせるバッターであり名誉挽回したかった
・7 監督はバントの指示を出した
・8 しかし星野くんは大きくスイングして二塁打を打った
・9 その後のバッター杉本の犠牲フライでR中学は勝ち、甲子園へ進んだ
・10 試合の翌日監督は星野くんを呼び出して以下のような事を言った
 野球部の規則は皆で相談してきめた。
 いったん決めた以上は厳重に守るようにした。
 チームの作戰としてきめたことには服從してもらわなければならない。
 皆はこれに賛成してくれた。
・11 監督は星野くんの甲子園出場を禁じ、謹慎を命じた
・12 監督は「異存はないか?」と問うた
・13 星野くんは「異存はありません」と答えた

まとめ方次第で抱かれる感情が変わってくるので、あくまでわたしから見たまとめという風にとどめてください。原文リンクは最下段に貼りますので。

どうですかね。

ザ・道徳の授業という感じがしませんか。

・学校の指導でここまで指示系統への遵守を徹底すべきか。
・ヒットを打ったのに謹慎なんておかしい。
・指導するのは良いが謹慎はやりすぎ。
・勝ったんだからいいじゃないか。
・調子の悪かった星野くんにバントの指示を出す監督は妥当。
・チーム統率のためにルールの遵守を強いる監督の気持ちがわかる。

どのような視点で捉えるかによって正否が変わりますし、そもそも正否という視点で捉えることさえ憚られるくらい意見の分かれるところかもしれません。

ちなみに、戦時中……に限らずですかね、軍においては上官の命令に従わない場合は抗命罪に問われます。自衛隊においては明白かつ重大な違法がある上官の命令であれば命令は無効であり服従する義務はないようです。

そしてマイケルジョーダンはこういうことをおっしゃってます。

To be successful you have to be selfish, or else you never achieve. And once you get to your highest level, then you have to be unselfish. Stay reachable. Stay in touch. Don’t isolate.

成功したいなら自己中心的になる必要がある。そうしないと成功なんてできない。ただし、一度成功したならば、さらなる高みを目指すべく、自己中心的な考えを捨てるべき。聞く耳を持とう。仲間とつながろう。孤立しちゃいけない。
https://www.brainyquote.com/quotes/michael_jordan_109197

ア・フュー・グッドメン』(A Few Good Men)は、星野くんの二塁打の話を見た時にふと思い出したタイトル。とある事由によって、同僚を殺害してしまった上等兵と一等兵が法廷で裁きを受ける過程がテーマとされています。若かりし頃のトム・クルーズ、デミ・ムーア、ケビン・ベーコンの豪華俳優陣。そしてジャックニコルソンがいい。凄くいい。
話変わるんですが、この映画に出てくるこの台詞の一つが、もの凄く控えめにお誘いするときの例文として物凄く心に残っています「 I was wondering if… how’d you would feel about my taking you to dinner tonight. 」

大人になって道徳の授業を見直すと面白いですね。

国がどのような道徳を教えようとしているかだとか、自分がどのような視点を持っているかを再確認できるので。

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こちらの論文P1~P10で星野くんの二塁打についての考察があります。

http://www.ritsumei.ac.jp/file.jsp?id=375101
『星野君の二塁打』の道徳教材としての価値を再検討する
― 高校 2 年生「法学入門」の授業において ―
和田 篤史

授業ではどのように取り上げられているか、現在(平成20年頃)と以前(昭和50年頃)とでの取り上げられ方の例示、作者の意図、法学的な視点、生徒の反応・感想なんかがまとめられているので、テーマを見た時に自身がどれほどの視野でそれと臨んでいたかなんかの照らし合わせに役立つかもです。

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授業では以下の部分が削られているケースがあるようです。
いわゆる道徳観の押しつけを避けるためでしょうか。

・12 監督は「異存はないか?」と問うた
・13 星野くんは「異存はありません」と答えた

バランス感覚を養うという意味では、しっかり記述して判断の基準を持てるようにした方がいいと思うんだけどな。

教える側の難易度がぐっとあがってしまうけれど。

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今日の記事を書こうと思ったきっかけはよく見るロザンのyoutubeチャンネルから。

菅さんの見解がいつもおもしろい。

今回も面白い。

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著者の吉田 甲子太郎 (1894-1957)はお亡くなりになってから50年が経過しているので以下から辿ってみてください。著作権が一度切れているので原文を載せているサイトもちらほら。

httpsになっていなかったりしたので、念のため原文への直リンクは避けています。以下から辿ってみてください。星野くんの二塁打 原文 – Google 検索www.google.com