「たり」を一回で使って良いか

Wordを使っているとスペル間違いであったり、揺らぎであったりを指摘してくれて、サポート機能を重宝している。

指摘の中で特に印象に残っているのが「たり」の使用法です。

これですね。

たりたりせよと怒られる

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「~たり」は繰り返して使います

例えば文頭で使った

スペル間違いや揺らぎであったりを指摘してくれて

なんて書き方をすると怒られます。
「~たり」は繰り返して使います、と。

文のリズムとしては「スペル間違いであったり、揺らぎであったりを指摘してくれて」より、「スペル間違いや揺らぎであったりをしてくれて」としたいシーンってままあるんですよね。たり、たりしたくないとき。

とはいえ、
「あ、こいつ『たり』を一回で使ってる」って思われたくもないので、ちょっとリズムが好みと違えど、嫌々たりたりする訳です。

で。

ホントにあかんの?

とふと思い、さっき調べたんですよ。

ちょっと3つ。

■ひとつめ:他の場合を類推派

たり
[接助]《文語の完了の助動詞「たり」から》用言、一部の助動詞の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞に付く場合は「だり」となる。

㋐動作や状態を並列して述べる。「泣いたり笑ったりする」「とんだり跳ねたりする」
㋑反対の意味の語を二つ並べて、その動作・状態が交互に行われることを表す。「暑かったり寒かったりの異常な陽気」「足を上げたり下げたりする運動」
2 (副助詞的に用いられ)同種の事柄の中からある動作・状態を例示して、他の場合を類推させる意を表す。「車にひかれたりしたらたいへんだ」
3 (終助詞的に用いられ)軽い命令の意を表す。「早く行ったり、行ったり」
引用:https://www.weblio.jp/content/%E3%81%9F%E3%82%8A

「他の場合を類推させる意」

おお。
ならば「たり」は一つで使ってもいいやんね。

はいはい、今日の疑問解決!

と思いつつも、他にもいろいろあったので…

■ふたつめ:たりたりしなさい派

NHK 放送文化研究所
A「(休みの日には)本を読んだり音楽を聴いたりして過ごしています」と、「たり」を繰り返す形にするのが本来の言い方・用法です。
(略)
最近は放送のニュースや番組でも、後ろの「たり」が落ちる傾向がありますが、意味をはっきりさせ文体を整えるためにも、この対応・用法は守ったほうがよいでしょう。この「~たり~たり」の語法が守られない背景には、文章そのものが長くなりすぎる傾向もあるためと思われます。本来の語法を守ることとあわせて、「ニュースの原稿や番組のコメントは短く簡潔に」という基本的なことも常に心がけたいものです。
引用:https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/gimon/154.html

公共の場では、たりたりが適切とされているような印象ですね。

NHK然と、毅然と。「本来の語法」と言い切るあたりに余地を残さない感がすごい。

■みっつめ:曖昧な例示ってのもあるよ派

毎日ことば
「たり」を一つだけ使う用法が派生した要因は「形態的には、19世紀ごろから、前・後件の動詞が『を』格を含む形をとりはじめ、構文が長くなっていくことで並立性が希薄になる場合が生じたこと、意味的には、15世紀ごろより朧化(ろうか=ぼんやりする、曖昧になる)用法の『なんど(〈など〉の前身)』、19世紀にかけては『なにか』等としばしば共起したことによって、その朧化機能が、隣接する『たり』に転位していったことなどが考えられる」(日本国語大辞典)(略)
「並列」から「曖昧な例示」の用法にさらに変化していることが分かります。(略)
曖昧な例示をしたい時には「たり」一つの用法を使えばよいですし、例示を並列するときは、やはり、後ろの「たり」を省略することは避けた方がよいでしょう。
引用:https://mainichi-kotoba.jp/blog-20160116

これが一番好きでした。

「こないだの連休は本を読んだりして過ごしたよ」

という感じですね。

本だけ読んでいた訳でもないし、他に列挙するような並列的な出来事もなかったし。そういう時、どういう顔すればいいかわかりませんものね。笑えばいいんですけども。

この例示を掲げれば、胸張って使えそう。

用法はあるけれども

他の場合を類推させたり、曖昧な例示として使ったり。たりは一回でも使えるのだけれども……。

まーまー、それを誤用としてやいやい言う人も多いんでね。

たりの一回使いは避けた方が無難といったところでしょうか。

ただ、知ってするのと知らいでするのとは大きく違う訳で、「たりの一回使い」、どうしてもやりたいなら、胸を張ってやればいい、と。

先述の通り用法自体はありますし、あながち全くの誤用だとも言い切れないので。

好み、こだわりですね。

以上を踏まえて

ライターさんであったり、作家さんであったりが、敢えてたりの一回使いをしているシーンがあれば、そこには確かな意図がある場合が多いんですよね、きっと。

疑義のある用法であるって知らない訳がないので。

誤用やら疑義のある用法を知る醍醐味って、知識増強に加えて、そういう書き手の意志みたいなものに触れられるシーンが増える楽しみにあったりもします。

あったりもします。

***

たりたり言ってるとラジバンダリを思い出します。

行ったり、来たり、ラジバンダリ。
解散しちゃったけども。