「象は鼻が長い」、「私はうなぎだ」、「こんにゃくは太らない」と三上文法

「象は鼻が長い」
「私はうなぎだ」
「こんにゃくは太らない」

どこかで見聞きしたことのある人も多いだろうし、検索すればうなるほど説明が出てくる三つの文。文法学でも注目されていて、ちょっと噛み砕くと「?」ってクエスチョンが出てくる興味深いトピックスである。

物凄くかいつまむと…

「象は鼻が長い」
主語どれ?問題。
「は」、「が」とつくと、主語って習ったよね?
象は、長いの?
鼻が、長いの?

「私はうなぎだ」
あんた、うなぎやったん?問題。
私は人間だ。ですと私=人間なんですよ。
これは小学校で習うんでね、わかります。
私=うなぎですか?ってはなし。ちゃいますよね。
でも文脈さえあれば、意味は分かるんです。
「さー、レストランにやってまいりました。義男君はカレーね、さっちゃんは焼肉定食ね、君は?」
「私はうなぎだ」
文法的にこれってどう説明するんだろうっていうね。

「こんにゃくは太らない」
え、比喩?
こんにゃくが太るとか、太らないとかってないわけです。
文脈的には、以下みたいな感じですね。
「あー、ダイエットしたいよー。でもたくさん食べたいよー。なんかいい食べ物ないかなー」
「こんにゃくは太らないよ」
これも日常よく使われる言い回しなんですけど、主語と述語がなんかしっくりこない。

で、このあたりの課題を知ったのはそれこそ10代後半くらいで、ちょこちょこ調べてみていたものの、ちゃんと自分の納得いく整理ができてなかったんですよね。

それがバチっとできました。ので、書いてます。

まず、文法学にはいくつかの説というか、整理の仕方というかがある、と。
例えば、この辺が有名らしい。
山田文法松下文法橋本文法時枝文法
学校で習うのは、学校文法
橋本文法をベースにしているらしい。

このあたりの文法解説では「象は鼻が長い」、「私はうなぎだ」、「こんにゃくは太らない」を説明しはするものの、なかなかしっかり説明するのことがむずかしい(これは諸説ありますし、個人的な見解でもあります。全部の文法学に目を通したわけでもありません。原則論にあてはまらないので、例外的なルールをたくさん作る必要があるという意味で”むずかしい”という表現にしておりまして、素人の肌感です。あしからず。)。

そこで出てくるのが三上文法

「日本語には、主語ないんですよ」

え?

主語を抹殺したんですね。

“は”というのは、主題を表す方法なんだと。
「象は鼻が長い」だと、”象”というテーマのお話をしますよーって。
そのテーマに挙げられた象さんは、鼻が長いんだよーって。
そういうことですね。
「私はうなぎだ」だと、”私”について話していて、
(オーダーした内容が)うなぎですよーって、話。
いわゆる主語は省略されているということです。
こんにゃくも然り。

例えば…これ、Wikipediaから取ってきた文章を少しだけいじったものです。

官営八幡製鐵所は製鉄所である。
1901年(明治34年)の明治時代に操業を開始した福岡県北九州市にある。現在、日本製鉄九州製鉄所の一部である。2007年に構成資産のいくつかが経済産業省の「近代化産業遺産」に認定された。さらに2015年には、旧本事務所、修繕工場、旧鍛冶工場(福岡県北九州市)、および遠賀川水源地ポンプ室(福岡県中間市)の4資産が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(全23資産)の構成資産として世界遺産に登録されている。

「官営八幡製鐵所は製鉄所である」
って最初の文以外は、いわゆる主語がないんですよ。
でも伝わるでしょ。

これは”は”という主題提示によって「官営八幡製鐵所」が主題であることを理解しながら読むから意味が伝わるんです。文は分かれているけれど、官営八幡製鐵所のはなしで、主語は省略。主題は文を超えることができる。

なるほどなーって思いましたよ。

学校では習わない整理の仕方ですね。

調べるまで、そもそも文法学上、整理がいろいろあるってことも知らなかったですし。

■理解に役立った動画はこちら

■記事はこちら
日本語に主語はあるのか

■読んだことはないけれど…上記で触れた三上章さんの著書はこちら
象は鼻が長い

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動画の中で、説明されている方がおっしゃっていた言葉がとても興味深かった。
「フェルマーの最終定理は感覚的にも正しいかどうだかよくわからないもので、証明のために多くの人々が人生をかけた。『象は鼻が長い』って誰もが感覚的に正しいとわかるのに、それを文法学上説明できない。それを説明しようとするってとても興味深いに決まっているでしょう」みたいな。

ちょっと内容変わっているかもしれないですが。

ロマンですね。