ライトノベルのはしり「極道くん漫遊記」

もはやタイトルの「極道くん漫遊記」の字面と,絵の雰囲気と,作家さんが「中村うさぎ」であることくらいしか記憶に残っていないのだけれど,中学1年生の時に友人宅で目にして,手に取って,読了して「ああ,わたしも小説を読めるようになったんだ!」って初めて嬉しく思った一冊がこれ。今ライトノベルとカテゴライズされるジャンルのはしりである。当時,この類はスレイヤーズと極道くん漫遊記が双璧であったし,今ググってもそのようなことが書かれていたので,おそらく双璧の称号は大きくは外れていないはず。

それまでは文章を読むのが苦痛で苦痛でしかたなかった。
小学校の時の読書感想文では中身を汲めず,あらすじをつまみ食いして,それを書くタイプ。
その行為は「本を読む」というより「本を見る」という表現が近いかもしれない。
文章の字面を追うだけだから,読むことに面白さを見出せるはずがないし,感想も抱けない。
たくさん並んでいる文字を拾う作業。ただただの,苦行であり,苦痛である。

それを解消してくれたのが「極道くん漫遊記」である。

・友人が読んでいたので,読んだ事を共有したかった。
・冒険もので,それまで「読まされていた」課題図書なんかとは格別で魅力に満ちていた。

最後まで読めた理由はこの二つが大きいと思う。
読めるんだという実感が,自信にもつながって,敬遠の対象から壁がくずれ,それからちょこちょこ小説を手にすることができた。その後,そのシリーズを十冊程度読んで,いくつかのライトノベルを経て,赤川次郎を手にしたときに,何となく一皮剥けたって当時高揚した。

なにはともあれ恩人である。
極道くん漫遊記,中村うさぎさんありがとう。

読書を好きになれない,読書に興味はあるけれどとっつけない。
そんな人へ,特にこどもへ,かな。
この経験が,読みはじめのきっかけを提供するための視点になっている。