ウィットに富んだ「Who are you?」

オバマ政権の時,知人がホワイトハウスで働く機会に恵まれた。

「オバマに会ったらなんて言うの?」

「そりゃ,最初は『Who are you?』だよね」

これを聞いてなんと返答できるかってところにウィットがかかっている。
ちなみにわたしの返答は「なんでやねん!外交問題なるわ」であった。奇しくも中の下くらい突っ込みである。ふたつのステップで後悔がある。

まずひとつめ。
わたしは彼の「ボケ」に気づくことができなかった。
いや,当時の自分を擁護しつつ正確に表現すると,かろうじて「ボケ」であることには気づいていた。ただし,オバマを知っているのにもかかわらず「Who are you?」と敢えて聞くという無礼さを講じるという意味合いでのボケとして。
賢明な読者さんであれば気づくだろうけれど,これは本来「How are you?」と「Who are you?」を間違うという「ボケ」である。そして,普通に考えればホワイトハウスで働く機会のある人間がこんな間違え方をするなんてありえないと理解できる。こんな間違い方しないというのはもう絶対である。どれくらいありえないかというと,日本生まれ,日本語育ちの人間が「おはよう」と「はじめまして」を間違うくらいありえない。だから,これは間違いではなくボケであると即座に気づくべきであり,取り急ぎ正解の突っ込みはこれである。
「Howね,How」
しかしながら,これは正解ではあるものの評価は下の上である。
ちなみに,下の中はボケに気づけず「How are youやろ」と間違いを正す流れであり,下の下は間違いであることにさえ気づけないパターンである。

そしてふたつめ。
森元首相がクリントン元大統領にあった際,英語が下手すぎることが起因して「Who are you?」と言ってしまったという逸話がある。2000年頃の割と有名な話である。週刊誌ネタであり,捏造報道だとも言われているので,別に知らなかったとしても全く問題のないお話ではあるけれど,知っていれば知っていたでちょっとしたセンスの向上を図れるお話である。
要は,知人が対大統領に対して「Who are you?」をぶっこむというボケをサラッと出せたということから,おそらく彼はこれを知っていた可能性が高いということである。
もしわたしが,この話にピンと来ていたらこのように返せる。
「誰が神の国の回し者やねん」
このあたりでやっと上の下である。たかがWho are you?されどWho are you?なのである。

ウィットは難しい。